蝶戀歌9


孫策の訃報が届いたのは荊州を劉備がほぼ併呑した頃であった。

「小覇王が亡くなった?」

諸葛亮は眉を顰めた。
星を見る限りでは小覇王、孫策の天命はまだ先である。
聞けば于吉という導師を信用せず、疑ったことから反感を買い、于吉によって暗殺されたという。
孫呉は新しい君主を中心に、東呉の勢力をかためるであろう。

「孫策殿が・・・!いったいあの方が何故!」

劉備が声を震わせて俯く。
他者の死を自分の身のように嘆く。
計算で行っているのか、そうではなく真実そう思って肩を震わせるのか、諸葛亮にはわからない。
いやわかる気もない。
ただ、その姿を人に見せることで人心を掴む。
それこそが諸葛亮が国を実質治めるのに必要な君主の姿である。
この際理由などどうでもいいのだ。

「劉備殿、どういたしましょうか。弔問の使者に誰をたてましょう?」

諸葛亮はちらり、と劉備を見た。
そのときだった、

「失礼つかまつります。」

一声鈴を震わすような声音が響いたかと思うと、許しも得ずにひとりの女性が広間に飛び込んできた。

。」

劉備がわずかに腰を浮かす。
はまっすぐに主君劉備を見た。
そのの目は赤く腫れ、涙で潤んでいた。

「劉備様、諸葛亮様、非礼は深くお詫びいたします。ただ、先ほど小覇王、孫策様が亡くなったと聞き及びいてもたってもいられずこうして参りました次第です。お願いです、劉備様、諸葛亮様、このに弔問に行かせてくださいませ。孫策様は幼少の頃から共に育ち、ひいては袁術殿のもとへは共に下ったお方。実の兄とも慕って参りました。お願いいたします、どうか、どうか・・・!」

諸葛亮は内心苦笑した。
これが周瑜の訃報であるなら、はここまで願い出ることはなかっただろう。
もしかしたらわざと周瑜と再会させたことで、は孫策ともども兄とも慕った周瑜を完全に他人として排除せしめたのは他ならぬ自分のような気がして、諸葛亮は自嘲した。
への申し訳なさと、死を目の前に控えた周瑜への申し訳なさに。

、よくぞ言うた。私は孫策殿のの弔問にこれから建業へ出かける所存である。、そなたは趙雲と共に私の供として従ってほしい。」

突然劉備がとんでもないことを言い出した。
諸葛亮は驚いてまじまじと劉備を見る。
建業に行く?
それは殺されるか、取り込まれるかのどちらかでしかない。
とんでもないことである。

「殿・・・!」

諸葛亮は何かいいかけて口を閉ざした。
悲しみに震える劉備と
そして諸葛亮は小さく溜息をついた。

「わかりました。ここで私が何を言っても無駄なようですね。ただ小覇王が亡くなったとはいえ、智将周瑜もいますし、政治面では魯粛がいてどちらも侮れない傑物です。どうか十分気をつけてください。荊州は関張ふたりがおりますし、私も政治面で支える準備は万全です。ただやはり長である殿の不在はつけこまれやすいもの。なるべく早いお帰りを願ってやみません。」

諸葛亮は渋々といった体で答えるとくるりと背をむけてしまった。
主君劉備への精一杯の抵抗である。
しかし、建業に行くことを同意してもらえた劉備は喜び、そして小覇王の死に涙を流してそれと気がついていない。
いや気がついているかもしれないが、あえてどうこう、という態度を変えないのはやはりそこは主君であるからであろうか。
諸葛亮は羽扇をゆったりとゆらしながら思考をめぐらした。
荊州を取ったはいいが、周瑜は特に何も言ってこないし(そう約束させたということもあるが)、兵を差し向けるわけでもない。
ということは周瑜は劉備に対して何か策を練っているといえよう。
それは殺すという選択肢のほかに、呉の配下としてとりこんでしまおうという策も考えているのではないかと推測をたてる。
さて、どのように劉備を呉の配下とするのであろうか。
孫策、孫権兄弟には妹がひとりいたはずである。
孫尚香といったか。

諸葛亮は眉根を寄せた。

劉備は長坂の戦いで妻のひとり、糜夫人を亡くしている。

――結婚ですか。

いかにも東呉の考えそうなことである。
家族というものを大切にし、一族、幼馴染、盟友、そういったあてにならない関係を大事にし、それによって強固なまでの結束力を得ている東呉。
誰の発案かはわからないが、劉備を取り込むのであればそのような手を使ってくるはずである。
しかし、劉備は東呉にとっては仇敵である。
殺せるものなら殺したい。
そう考えていておかしくはない。
つまり、劉備が東呉に足を踏み入れた時点で殺されることは十分ありえるのだ。

――まあ、いただけるものはいただいてきてもらいましょうか。

気がつけば劉備とは下がっていた。
執務室となっている広間にひとり、諸葛亮は羽扇を揺らしながら思考している。
そして、羽扇を置いた。
諸葛亮は執務室をあとにした。
馬場のほうへと足を向ける。
そこにいるのは最近ますます武将として、そして将軍として風格も落ち着きも出てきた趙雲であった。

「趙雲、少しいいですか?」

諸葛亮が馬の手入れをしている趙雲に声をかけた。
趙雲が振り返る。

「あなたに頼みがあります――。」












弔問に訪れる一行、ということで兵はあまり華美にせず、東呉には弔問に出向く、とだけ簡単に先触れを出しておいた。
同行する武将は趙雲とである。
趙雲は鎧を身に着けているが、は喪に服した色の衣を身に着けている。
趙雲はちらり、と劉備を見、そしてを見た。
の目は赤く、毎夜泣いているのだろうか、なかなか涙が収まらない日はないようである。
それだけに孫策、いや東呉との間には固い絆があり、それは趙雲でさえ触れることの出来ない領域であった。
しかし、君主劉備を無事に荊州に連れ戻すためにはを利用しなければならないことに趙雲は心が痛むのを感じた。
もうこれ以上が傷つくのを見たくない。
趙雲は思いをめぐらした。
諸葛亮に授けられた数々の智略を考えても、今回はを傷つけることはない。
ただ単に東呉が差し出すものを受け取って、無事に帰還せよ、ということである。
江東へ向かう一行が南徐の港についた。
そこで趙雲は最初に諸葛亮から与えられた指示を遂行する。

「こちらには亡き孫策殿の細君の父君、喬国老がおわします。喬国老は孫策殿にとっては婿君。頼もしい婿君を亡くされてさぞ心弱りされていらっしゃいますでしょう。是非喬国老にお会いになってお力添えをなさるべきです。」

とこのように劉備に進言した。
劉備と喬国老を会わせること、そして孫尚香の話題を上手く出すこと。
そのことが趙雲に与えられたまず一つ目の策であった。

「うむ、趙雲の言うとおりだ。喬国老に挨拶をしていかねばならぬ。趙雲、、供を頼む。」

劉備は趙雲とを連れて喬国老のもとを訪れた。
突然の娘婿の死に悲しみにくれていた喬国老であったが、劉備の真摯な態度に心打たれ、すぐに劉備とうちとけた。
そして建業へ同行しようとまで提案してきたのである。
願ったり叶ったりである。
喬国老と同行していれば、建業に入ってすぐに殺されるということはないはずである。
まずは建業入りが無事にできるということで、趙雲はほっとした。
劉備はその申し出を受けると弔問の見舞いの品々を南徐で買い求めた。
大手を振って弔問に訪れる、という形が整ったからである。

喬国老は劉備らとともに陸路建業を目指す。
その間、喬国老の思惑を諸葛亮はすでに先読みしていた。
つまり、劉備の人徳を呉に取り込めないかと思案することを。
そしてそれには孫策、孫権の妹である孫尚香と娶わせたらどうかということをである。

殿、そなたは先の丹陽太守の養女とか・・・、ということは孫尚香殿もご存知か?」

と轡を並べて喬国老が訊ねた。
は一瞬目を見開いた。
懐かしい人物の名には遠い過去に思いをはせる。
一番よく遊び、双子のように仲のよかった孫尚香。
孫尚香が腰に弓をさしたことから弓腰姫、細剣を自在に操った自分が剣掌姫・・・。
もちろんそれは女の、それもまだ少女の域にさしかかったばかりの二人が、そんな風に武芸を好んだことから、周囲がおもしろがってつけた仇名である。

「一番仲のよい友人です・・・。もうずっと会っておりませんが・・・。」

の言葉に満足そうに喬国老が頷く。

「姫君は忘れてはおりませぬぞ。私は姫からことあるごとに剣掌姫の名をきいたことがあります。あなたのことですね?殿。」

小喬の夫である周瑜のもと婚約者であるということもわかっていたが、が劉備のもとで武将としているなら、特に何も思わない。
逆に呉と劉備を取り持つ仲介役にこれほどふさわしい人物もいないだろうと踏んだのである。

は俯いたまま何も言わなかった。
は喬国老にどのように自分がうつっているかわからなかったからである。
喬国老はゆっくりと頷いた。
自分の娘である小喬と周瑜との間に波風が起こっては、と考えてのことだと思うと喬国老は好ましく感じたのである。

「孫策殿が亡くなられて大層心弱りされております。どうか殿、姫を力づけてくださいませ。」

喬国老の言葉には小さく頷いた。
孫策が亡くなって、自分ですらひどく悲しんでいるのだから、本当に仲のいい兄妹だった孫尚香の悲しみはいかばかりであろう?
孫尚香の悲しみを思うと、自分がしっかりせねば、と思う。
はこっくりと頷いた。
その様子を少し離れた位置から趙雲が見ていた。
どうやら諸葛亮の策は成ったようである。
喬国老はをダシに孫尚香と劉備を娶わせるであろう。
孫権らの間にもそのような考えがあれば、一気に話は加速する。
喬国老の後押しがあれば、諸葛亮のいう「もらえるもの」はもらえるということである。
あとはいかに生きて呉を出るかということとなる。
とにかく今回はを利用はしたくなかった。
だから諸葛亮の策を聞く前、趙雲は泣いて叫んでもを建業に連れるのだけは避けたいと思っていたのである。
しかし今回はを利用しないということで趙雲はの建業行きを納得した。
けれども主君劉備のこと、のこと、それぞれの考えや行動が読めなければ諸葛亮の思惑通りにはならない。
改めて諸葛亮の軍師としての才に趙雲は敬服する思いであった。

建業に入ると喬国老はすぐに城へと案内をした。
そして旅装を解くこともなく、劉備とは孫権、孫尚香のもとへと通された。

っ?!」

孫尚香は久しぶりに見た親友の姿に驚いて駆け寄った。

「孫尚香様!」

抱きついてきた孫尚香をが抱きしめる。

「兄さまに聞いて会いたかったわ!来てくれるなんて本当に嬉しいっ!」
「孫尚香様、私もお会いしたかった・・・!」

何年経っても変わらない、二人の友情である。
幼い頃からともに遊び、学び、孫策、孫権、周瑜と共に過ごした日々。
ともに成長し、みなそれぞれに変わっていく。
お互いの立場、人間関係、大人になればそれまで知らなかったこともわかってくる。
けれども幼い頃に結んだ絆は今でもそこにある。
すべての則を越えて、友達としてと孫尚香は抱き合った。







久しぶりの再会に孫尚香とは建業の城の中庭の東屋でふたり懐かしく話をした。

「策兄さま、いつも言っていたわ。袁術殿のもとからを連れて来れなかったのが心残りだと・・・。本当に悔やんでいたの・・・。」

は寿春城での孫策との別れを思い出した。
あのときの袁術の覇権から考えればやはり無理なことだったのだ。
は首を振った。

「孫策様は悪くありません。あのときは仕方がなかったのですから・・・。」

の言葉に孫尚香がまたも涙をこぼす。

「周瑜があんなに激昂して策兄さまに詰め寄ったのをはじめてみたわ。周瑜、本当にあなたが好きだったから・・・。今でも遅くないわ、周瑜のもとに嫁がない?が周瑜に嫁げば私たちまた昔のようにすぐ側にいられるわ。周瑜は今柴桑にいるけど、邸はこちらにあるし・・・。」

孫尚香の言葉には首を振った。

「私にはすでに心を決めた方がいます。きっと私はその方とめぐり合う運命だったのだと思います。お心はありがたいのですが、周瑜とて迷惑な話。どうかこのまま・・・。」

は脳裏に趙雲を思い頬を少し染めながら答えた。

「誰なの?ねぇもしかして劉備殿・・・?」

孫尚香の語気がわずかに鋭くなる。
は思わず大きく首を振った。

「まさか・・・!殿とそのような・・・!素晴らしく仁に篤い方で尊敬しておりますが、私のようなものが皇叔であるあの方とだなんて!」

の否定に孫尚香は小首を傾げた。

「劉備殿ではないの・・・?」

その声にはどこか安堵のようなものを感じ、は思わず孫尚香を見た。

「そっか、そうなんだ、な〜んだ、そうだったのかぁ〜。」

孫尚香が頬を染めて照れ笑いをする。

「孫尚香様、殿・・・劉備様が・・・?」

の言葉に孫尚香が首筋まで真っ赤になる。

「うわ・・・、墓穴掘っちゃった・・・。」

孫尚香の言葉には思わず微笑んだ。

「殿は赤壁の戦いのすぐあとに奥方様を亡くされて今はおひとりですわ。」

はいたずらっぽく真っ赤になって俯く孫尚香に言う。
の言葉に孫尚香がおそるおそる顔をあげた。

「ねえ、一目ぼれってあると思う・・・?」

孫尚香の情けないほどに真っ赤になっている様子には笑みを覚えずにいられない。

「あると思います。私も一目ぼれだったのですから。」

汝南の地の山寨で、見事な槍使いを見たあのときから、きっとは趙雲を好きになっていたのだと確信できる。
主君を共に仰ぎ、共に戦いながら、信頼できる人になっていった。
あのとき趙雲と会っていなかったら、は劉備の武将となることはなかっただろう。

「はじめて出会って、とても心惹かれて、ともに過ごすうちに信頼し、共に背中を預けあうようになって、その方も同じように思ってくださって・・・。」

は今までの趙雲との出来事を思い浮かべながら話した。
恋愛をすることの素晴らしさ、辛さ。
それらすべてをひっくるめても、愛することの素晴らしさを知った。
もし群雄割拠の時代ではなく、あのまま周瑜と、養父の意のまま婚約者と一緒になっていたら、ただ愛されることしか知らなかったら、きっとこのように思えないだろうと思う。
だから孫尚香にも愛する喜びを知ってもらいたいと思う。
まして孫尚香はから比べればはるかに身分も高く、政略結婚の道具となりかねない立場なのであるから。

「・・・その人を愛してるのね・・・。」

今まで見たことがない、穏やかで優しい顔をしている親友に孫尚香は微笑んだ。
愛する人と結ばれる。
当時の女性ではどんなに難しいことであろう?
が呉を、故郷を捨てた理由が孫尚香にようやくわかった気がした。
愛はすべてをも捨ててしまえる勇気をもたらすのだと。

そのとき二人の話す東屋にひとりの人物がやってきた。
劉備である。
側には趙雲が控えている。
は劉備の姿にきがつくと、さっと膝をついて頭を垂れた。

、孫尚香殿もご一緒であられるか。もう日も暮れようぞ、孫権殿が宴を開いてくださるとのこと。失礼のないように準備をしなさい。趙雲、を部屋に送りなさい。私は孫尚香殿をお送りする。」

劉備の言葉には短く頷くと、孫尚香の前を辞して趙雲とともに姿を消した。




その夜はささやかながらも劉備たちを歓迎する宴が開かれた。
身内だけの喪を纏った宴である。
孫尚香と劉備は並んですわり、孫尚香が歓待の相手をしていた。
離れたところで呉国太(孫尚香の母)と喬国老が。
悲しみに打ちひしがれている大喬は出ず、小喬が侍女に囲まれるように座し、孫権がと趙雲の側で歓待をする。

「遠路はるばる建業にまで兄上の弔問に来てくれるとは、本当にありがとう、。そして趙雲殿。」

孫権は二人の杯に酒を注ぐながら謝辞を述べた。
は小さく礼を述べる。
そして注意深く孫権を見る。
兄、孫策の喪であるけれど孫権の瞳は為政者の目であった。
肉親の情はもちろんあるであろう。
しかし、この呉を背負って立つ孫権には肉親の情に流されている暇などないのだろう。
言葉少なに答えるに趙雲も特に何も話そうとはしなかった。
しかし孫尚香と劉備は違い、話が弾んでいるようである。
呉国太と喬国老は二人、孫尚香と劉備をみて満足そうに話をしている。
小喬はひとり、何も言わずただ俯いて侍女に囲まれているだけである。
やがてやることがあるからと、魯粛に促されて孫権はその場を辞した。
と趙雲もわずかばかりその場を過ごし、宴席を辞した。
呉国太や喬国老が、本人の孫尚香が劉備を気に入っている以上、劉備の身に危険が及ぶことはないと判断してのことである。
と趙雲は用意された部屋で今後の話をしていた。

「孫権様は油断がならないわ。あの方は君主としては理想的な方よ。孫策様のように自ら国をひっぱるのではなく、また国を誰かに任せっぱなしにする暗君でもない。君主として役人たちの意見をまとめる才のある方よ。」

昔から孫権は周囲をよく観察し、意見をまとめるのが上手であった。
孫堅、孫策によって作り上げられた呉を、君主として率いていくのにまさに孫権は理想的とも言えるだろう。
ある意味、孫策や周瑜よりもやっかいな相手かもしれない。

、孫尚香様はどういうお方か?」

趙雲が杯に水を注いでに渡す。
は小首を傾げた。

「武道をよくする方よ。素直な方で可愛らしい方。幼い頃から共に過ごしたけれど、本当にお優しくて爽やかな気質の姫君よ。」

の言葉に趙雲はわずかに微笑んだ。
穏やかで仁を大切にする劉備とはいい縁のような気がしたからである。
不意にが微笑んだ。

「孫尚香様、殿にお心を奪われてしまったみたい。先ほどお話してた折、殿のお話ばかり・・・。さっきの席でも殿のお側で・・・。」

の言葉に趙雲も笑った。
まわりがお膳立てするよりも当事者同士が相手を気に入ったのならばそれに越したことはない。
趙雲はを背中から抱きしめた。
はされるがまま、そっと趙雲の胸に身体をあずける。
そして趙雲のたくましい腕に手を触れる。

「私、きっと初めてあったあのときから趙雲のこと・・・。」

汝南の山寨で初めて出会ったあのとき。
惚れ惚れするような素晴らしい槍さばき。
そして何より素直で爽やかな微笑を向けられたとき。

「好きになっていたんだわ・・・、あなたのこと・・・。」

の言葉に趙雲の腕に力がこもる。

「私も。あのときなんて綺麗な子がこの山寨にいるんだろうと・・・、そしてその子と仲良くなりたいと、無茶を承知で劉備殿に仕えることをすすめたんだ・・・。」

趙雲はを抱き上げると臥牀へと連れて行った。

「あのときから私はあなたを妻にしたかった・・・。」

甘い口付けはひと時の夢のようで。
呉の夜は更けていった――。